投資をする人は誰だって損をすることなく儲けたいと思うだろう。でも「絶対に損することなく必ず儲かる投資対象を教えて下さい。」とか言ったら、「金融リテラシーが足りないな。」と思われてしまうだろう。あるいは「投資詐欺のカモ」として狙われるかもしれない。
投資の世界ではフリーランチ(ただ飯)は無いといわれている。これは損する可能性をひきうけることで、その報酬としてリターンが得られるということである。言い換えれば「損するかもしれないし、得するかもしれないもの」に投資するしかない、ということだ。
とは言ってもこれだけでは投資の判断なんかできるわけない。せめて「どのくらいの確率で損をして、どのくらいの確率で得するのか?」、「最悪ケースでどのくらい損をすることがあるのか?」、「平均的にはどれくらい得(または損)するのか?」といったことは知りたい。通常こういった問題は確率密度関数で表現されることが多い。
下図は投資リターンの確率密度関数をモデル化したグラフである。横軸が一年間運用した際のリターン、縦軸がそのリターンが実現する確率を表したものである。
通常この確率分布関数は正規分布で表現することが多い。ここでは期待値5%、標準偏差20%としている。実はこの期待値と標準偏差が投資の世界ではリターンとリスクと呼ばれるものである。株式では期待リターン5~7%程度、リスク20%程度とされることが多い。
それではグラフで表されている期待リターン5%、リスク20%の投資対象に一年間投資した結果について考えてみよう。
まず平均的には期待値5%程度のリターンが得られる。これはまあ定義どおりだろう。ではその5%からどの程度ブレるのか?。正規分布に従うと仮定しているので、期待リターン±σ(標準偏差=リスク)内すなわち-15%~25%の範囲内となる可能性は約68%と想定される。逆に言え約32%の確率でこの範囲外となる。つまり25%以上の利益を得られる可能性が約16%あるが、15%以上の損失を被る可能性も約16%ある。
同様に、期待リターン±2σ内すなわち-35%~45%の範囲内となる可能性は約95%と想定される。つまり45%以上の利益を得られる可能性が約2.5%あるいっぽう、35%以上の損失を被る可能性も約2.5%ある。